歯科心身症

歯科心身症とは

女性写真

歯科心身症とは、歯や舌など口腔内に不快感や痛みがあるのに、歯科医院で検査を行っても異常が見つからない、あるいは治療を行っても症状が改善しない疾患です。

原因がはっきりとしない歯や舌の痛みを訴える患者様をはじめ、口腔内の乾燥や味覚異常を訴える患者様なども含めると、歯科医院に通う患者様全体の約10%が歯科心身症に該当すると言われています。

他にも、被せ物を何度調整しても合わない方、口臭や治療に過度な恐怖心をお持ちの方も歯科心身症に含まれます。

歯科心身症の症状

痛み

舌痛症

舌など口腔内粘膜にヒリヒリした痛みやピリピリした不快感が慢性的に続く状態です。

非定型歯痛

原因不明の慢性的な歯の痛みで、痛みは歯茎や顔面にまで広がることもあります。

不快感・異常感

口腔異常感症(口腔セネストパチー)

舌など口腔内粘膜にヒリヒリした痛みやピリピリした不快感が慢性的に続く状態です。

咬合異常感(こうごういじょうかん)

何度調整しても改善しない咬み合わせの異常や義歯の違和感です。

その他

歯科(治療)恐怖症、口臭恐怖症など

歯科心身症は精神的な
ストレスからくるもの?

歯科心身症は、原因がはっきりせず治療を行っても改善しない症状の総称です。

患者様が訴える症状に対して、治療や調整を何度行っても改善しないため、治療期間が長引きます。また、処置を何度も行うことで余計に治りにくくなることも往々にあります。

器質的な異常がないことから精神的な問題が原因と考える方もいらっしゃいますが、精神科を受診しても異常がないと診断されるケースが多いです。

それであれば、症状の原因は何なのでしょうか。はっきりとした発生機序は明らかになっていませんが、神経の混線や脳機能のアンバランスによるものではないかと言われています。

根拠の1つに、脳機能画像検査で脳血流のアンバランスが確認されたというデータがあります。

歯科心身症がよく認められる方の特徴

中高年の女性に認められることが多いです。また、性格的な特徴もあり、几帳面で真面目な方の発症が目立ちます。

歯科心身症が起こる仕組み

脳内でエラーが起きています

はっきりと分かっているわけではありませんが、脳の情報処理の歪みや神経伝達物質のバランスの乱れによって起こるのではないかと言われています。つまり、脳内で起こるエラーが原因ではないかと想定されています。

歯科心身症の治療について

歯科心身症は、処置を繰り返す行うほど難治化していくため、治療方針を見直すことが重要です。まず、歪んだ口腔感覚を整えることが優先され、不要な刺激を避けるために歯科治療を一時中止し、鎮痛補助薬などを使った薬物療法を行います。

口腔感覚が安定した後は通常の歯科治療を進めやすくなります。また、「歯が原因で不調が起きている」という誤った認知(考え方)や行動を修正する認知行動療法も同時に行います。

ただし、口腔感覚の不調は様々な原因で起こるため、原因をしっかり見極めることが必要です。統合失調症やうつ病の患者様に見られることもあれば、自然災害による厳しい環境や精神的な限界が影響して不調を引き起こす場合もあります。こうした場合、精神科医との連携が不可欠です。

大学と連携した歯科心身症の治療

当院では、各患者様の状態に応じた高精度な治療を行えるように大学の医学部・心理学部と連携しています。この体制を整えたことで、歯科心身症の最新の知見を共有できるようになりました。

また、歯科心身症は心因的な側面も大きく、心理学を専攻する大学の教授と連携して認知行動療法を行うことで、これまで以上の治療成果が出るようになりました。患者様の心身の状態をトータルでサポートできるよう、今後も連携強化に取り組んでまいります。